文献紹介

イマチニブ400mg/日で進行をきたした進行消化管間質腫瘍に対するイマチニブ800mg/日への増量の有効性

Outcome of patients with advanced gastro-intestinal stromal tumours crossing over to a daily imatinib dose of 800 mg after progression on 400 mg
John R. Zalcberg et al. Eur J Cancer. 2005; 41: 1751-1757.
国立がん研究センター中央病院 西田俊朗

背景

EORTC-ISG-AGITGは、進行消化管間質腫瘍GIST)の患者さんを対象にイマチニブ400mg/日と800mg/日の有効性を比較する無作為化第III相試験を行い、両群の病勢コントロール率は同等であるが、無進行生存期間は800mg/日群の方が良いことを報告した1)。同試験では、400mg/日で進行を来たした症例に対して800mg/日へのクロスオーバーを認めている。本研究では、これらのクロスオーバー症例について安全性と有効性を評価し、イマチニブ400mg/日投与で進行を認めたGISTの患者さんに対して800mg/日への増量が有用であるか検証した。

対象と方法

KIT陽性の進行性/転移性GISTの患者さん946例をイマチニブ400 mg1日1回投与(400mg/日群)または400mg1日2回投与(800mg/日群)に無作為割付し、進行するまで、または認容できない副作用が発現するまで治療を継続した。400mg/日群で進行をきたした症例に対しては800mg/日への移行を認めた。
本研究の主な評価項目は、400mg/日群における進行後のクロスオーバー率、クロスオーバー後の減量や投薬中止の累積率、副作用、治療効果であった。

結果

(1) クロスオーバー症例の特徴

400mg/日群に割り付けられた473例のうち進行を来たした追跡可能例は241例であり(追跡期間中央値:25ヵ月)、このうち55%(133例)が800mg/日へ移行した。クロスオーバー症例の92%以上は進行前(400mg/日投与時)におけるイマチニブの減量経験がなかった。クロスオーバー後の治療継続期間は112日(中央値)であり、1年後の治療継続率は23%であった。治療中止の主な理由は進行であった。半年以内に減量を要した患者さんの割合は、試験開始時から800mg/日群に割り付けられた症例(49%)に比べて、クロスオーバー症例(17%)において低かった(図1)。

図1 累積減量率および累積投薬中止率
クロスオーバー後
クロスオーバー後
治療開始時からの800mg/日群
治療開始時からの800mg/日群

グラフ内 破線より上側→減量なしに治療を中止
破線と実線の間→減量なしに治療を継続
実線の下側→減量

(2) 安全性

クロスオーバー後、貧血や疲労感の増悪が認められたが、好中球減少に関しては、むしろ増量後に軽減する傾向が認められた。その他の副作用の重篤度はクロスオーバー前後において同等であった。

(3) 有効性

クロスオーバー後の病勢コントロール率は29.4%(PR 2.3%+SD 27.1%)であり、無進行生存期間中央値は81日、1年後の無進行生存率は18.1%であった(図2)。Mickらの提唱に従い、growth
modulation index(クロスオーバー後の無進行期間/クロスオーバー前の無進行期間)が1.33以上の場合にクロスオーバー療法が有意義であると判断すると2)、クロスオーバー症例の24.5%(27/110例)がこの基準を満たし、4例中1例にクロスオーバーの意義があると考えられた。

図2 クロスオーバー後の無進行生存率
図2 クロスオーバー後の無進行生存率
クロスオーバー後の無進行生存期間(中央値)=81日

考察

イマチニブ400mg/日投与で進行を認めた症例に対し、新規薬剤を考慮する前に800mg/日への増量を行うことは有意義であることが示唆された。

[引用文献]

  • 1) Verweij J et al. Lancet 2004; 364: 1127-1134
  • 2) Mick R et al. Control Clin Trials 2000; 21: 343-359