文献紹介

初発GIST完全切除後のイマチニブによるアジュバント療法(Z9001試験)

Adjuvant imatinib mesylate after resection of localised, primary gastrointestinal stromal tumour: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Dematteo RP, et al. Lancet. 2009; 373: 1097-1104
国立がん研究センター中央病院 西田俊朗

背景・目的

イマチニブGISTの発症・進行に関与するKITおよびPDGFRA蛋白の活性化を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する分子標的治療薬であり、現在では切除不能/転移性GISTの第一選択薬とされている。本試験は初発GIST完全切除後の患者さんを対象に、イマチニブのアジュバント療法無再発生存期間を改善し得るかについて検討した。 

対象

2002年7月~2007年4月までの間に米国およびカナダの230施設において実施された。対象は免疫組織化学的にKIT陽性かつ腫瘍径3cm以上の初発GIST患者さんで、腫瘍の肉眼的完全切除後70日以内に登録され、84日以内に治療開始された。組み入れ基準は、18歳以上、PS 2以下、登録28日以内に手術後の画像評価で腫瘍の完全切除が確認され、十分な肝腎機能を有し、血液学的に異常がなく、妊娠の可能性のない患者さんとした。除外基準は、イマチニブ、化学療法あるいは放射線療法の既往のある場合、手術後に探索的治療を受けている場合、登録14日以内に抗生物質を必要とする活動性の感染症に罹患している患者さん、授乳期の女性、NYHA分類クラスⅢ~Ⅳの心疾患患者さん、ワルファリン投与中の患者さんとした。

方法

組み入れ基準を満たす患者さんを二重盲検法によりイマチニブ400mg/日投与群(359例)とプラセボ群(354例)に無作為に割り付け、手術後84日以内にアジュバンド治療を開始し、1年間の継続投与を行った。アジュバント療法開始後、1、2、4、6、8、12、16、20、24週時、その後は2年目までは3ヵ月おきに、5年目までは6ヵ月ごとに理学的所見をとり血液検査を行い、有害事象の評価を行った。有害事象は、CTCAE基準version 3.0により評価し、貧血以外で治療との関連が疑われるグレード3または4の有害事象が発現した場合は投与量の調整が行われた。腹部骨盤CT検査は、治療開始から2年間は3ヵ月、その後の3年間は6ヵ月ごとに行った。再発が認められた場合、中央評価の後、盲検は中止された。生検標本は医学的な見地から問題がなければ採取した。試験期間中、再発が確認された場合は、プラセボ群の患者さんはイマチニブ400mg/日投与に、イマチニブ群はイマチニブ高用量(800mg/日)投与に切り替え可能とした。

結果

両群の患者さんの背景に差を認めず、追跡期間中央値は19.7ヵ月(0~56.4ヵ月)であった。1年間のアジュバント療法を完了できなかった患者さんは、イマチニブ群97例(中断理由;副作用57例、再発1例、同意の撤回15例、その他24例)、プラセボ群87例(副作用11例、再発41例、同意の撤回20例、その他15例)であった。再発はイマニチブ群30例、プラセボ群70例に認められた。主要評価項目である1年間の無再発生存率は、イマニチブ群98%(95%CI:96-100)、プラセボ群83%(95%CI:78-88)であり、イマチニブ群で有意に無再発生存率が高かった(ハザード比0.35、p<0.0001、図1)。全生存率は、両群間で有意差を認めず(ハザード比0.66、95%CI: 0.22-2.03)、死亡はイマチニブ群5例(1%)(死因;再発は認めずその他の原因による死亡5例)、プラセボ群8例(2%)(死因;GIST再発5例、GIST再発後その他の原因による死亡2例、再発は認めずその他の原因による死亡1例)にみられた。また、腫瘍径別に層別解析を行ったところ、腫瘍径3~6cm、6~10cm、10cm以上のいずれの腫瘍径においても無再発生存期間はプラセボ投与群に比べてイマチニブ群でより延長した(図2)。副作用の解析可能症例682例(イマチニブ群337例、プラセボ群345例)のうち1度でも副作用を認めた患者さんは、イマチニブ群で333例、プラセボ群で314例であった。グレード1または2の副作用はイマチニブ群229例(68%)、プラセボ群251例(73%)にみられ、消化管に対する副作用(軽度の下痢、悪心、鼓腸)、頭痛、発疹、眼窩周囲または末梢の浮腫、倦怠感、筋肉痛、関節痛等であった。グレード3、4の副作用はイマチニブ群104例(31%)、プラセボ投与群63例(18%)に発現した。

図1 無再発生存期間(全患者さん)
図1 無再発生存期間(全患者さん)
図2 腫瘍径別の無再発生存期間(A:腫瘍径3~6cm、B:6~10cm、C:10cm以上)
図2 腫瘍径別の無再発生存期間(A:腫瘍径3~6cm)
図2 腫瘍径別の無再発生存期間(B:6~10cm)
図2 腫瘍径別の無再発生存期間(C:10cm以上)

結論

初発GIST完全切除後のイマチニブによる1年間のアジュバント療法の忍容性は良好であり、プラセボ投与に比べて無再発生存率を改善した。

コメント

本臨床研究は北米で行われた完全切除可能な局所進行GISTに対するイマチニブアジュバント治療の第Ⅲ相ランダム化比較試験である。本試験の結果、イマチニブ400 mg/日のアジュバント治療は術後再発を抑制することが示され、欧米だけでなくほぼ全世界でイマチニブのアジュバント使用の制限はなくなった。しかし、本試験では3cm以上と低リスクや中間リスクのGISTもかなり含まれており、アジュバント治療の対象が絞り込まれていない。また、有効中止となったため全生存期間に関しては、その有効性は確認されていない。したがって、実臨床では、本研究のサブ解析のデータから、再発率の高いhigh risk GIST(ないしintermediate risk GIST)やclinically malignant GISTが候補と考えられる。また、術後3年目で再発率も両群で類似してくるため、アジュバント治療期間は1年では不十分と考えられている。さらに、アジュバント治療がイマチニブ耐性を誘導する可能性等まだ多くの問題が残されている。これらの問題の解決には現在フォローの期間に入っているEORTCやドイツ・スカンジナビア共同臨床研究の結果が出るまで待たねばならない。