GIST診断・治療アップデート(2003年)
3. GISTの発生機構
3-1. KIT
POINT
KITはc-kit遺伝子にコードされる受容体型チロシンキナーゼであり,そのリガンドはstem cell factor(SCF)である。c-kit遺伝子の機能喪失型の突然変異マウスであるW突然変異マウスの研究からKITの生理的な役割が解明され,ICCsも細胞の分化・増殖にKITが必要不可欠であることが明らかとなった。
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3-2. ICCs
POINT
ICCsは約100年前に神経組織学者カハールにより最初に記載されたが,最近まで必ずしも十分な研究がなされていなかった。最近になりICCsにKITが陽性であることが示され,これまで細胞同定さえ困難であったICCsが,KITをマーカーにすることにより容易に特定できるようになり,ICCsの研究は一気に進展し,現在ではICCsは消化管自動運動のペースメーカー細胞と考えられるようになった。
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3-3. GISTの細胞起源
POINT
c-kit遺伝子には機能獲得型の突然変異が存在する。KITの機能が分化・増殖に必須であるICCsに,c-kit遺伝子の機能獲得型突然変異が原因となる腫瘍があるかもしれないという考えから,KITの発現をマーカーとしてGISTとICCsの密接な関係を見つけた。多発性GIST患者において,ICCsのびまん性過形成からGISTが発生することはGISTがICCs由来であることをほぼ決定づけるものである。
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3-4. c-kit遺伝子異常とGISTの発生
POINT
GISTの多くにc-kit遺伝子の機能獲得型突然変異がみられ,この突然変異は細胞の自律性増殖に関与することから,GIST発生の原因であると考えられる。突然変異の多くは傍細胞膜領域に集中してみられるが,細胞外領域やチロシンキナーゼ領域にも少数ながら存在する。多発性GIST家系はgermlineのc-kit遺伝子の機能獲得型突然変異が原因である。
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