GIST診断・治療アップデート(2011年)

FDG-PETについて

横浜市立大学大学院医学研究科 放射線医学
立石 宇貴秀 先生

保険診療によるFDG-PET

本邦でFDG-PETに関する診療報酬改定で、2010年4月よりGISTも適応疾患となった。このため、GIST患者さんを診療する際にFDG-PETを使用する機会が増えることが予想される反面、保険適用条件の詳細も周知しておく必要がある。厚生労働省保険局の通知によると早期胃癌を除く悪性腫瘍で「他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない患者さん」にFDG-PETを使用することができる。具体的には、病理学的に悪性腫瘍と診断確定されている場合は問題ないが、これが困難である場合には、臨床病歴、身体所見、FDG-PETあるいはPET/CT以外の画像診断所見、腫瘍マーカー、臨床的経過観察などから悪性腫瘍と診断される場合が適用条件となる。悪性ポテンシャルの高いGISTの場合はほとんど病理学的に確定診断されているため、FDG-PETの使用に関してほぼ問題になることはないと思われる。

FDG-PETを用いた初回診断

GISTは内視鏡検査にて偶発的に発見されるか、腹部腫瘤などの非特異性の腹部症状を評価するために超音波検査、CT・MRIで発見される。生検等による病理学的検索で確定診断された場合にはFDG-PETを施行し追加情報を得られる。Kanetaらは全国7施設のFDG-PETを施行したGIST患者さんの解析を行い、14例でFDG-PET所見が追加情報として役立ち、8例で治療方針の決定に影響を与えたと報告している(図11)。大多数の未治療のGISTでFDG取り込みを示すといわれているが、これまで10㎜前後の腫瘍に関しては分解能の限界で感度が不良であった。2010年11月の現在では、Time-of-flight (TOF)などのPET/CT装置の技術革新もあり、小サイズの腫瘍も描出可能となってきた。このため、これまで以上にCTまたはMRIでは確認できない病変とくに腹膜播種病変などを検出することができるようになった。腹膜播種病変の所見は腹膜への結節状集積や多発する腸管外集積が特徴的であり診断は容易である。肝転移では、ばらつきのあるFDG集積パターンを示すことが多い。しかしながら、近年、呼吸同期収集や息止め収集の開発により肝病変の検出能が向上し、とくに横隔膜ドーム下の病巣は呼吸による影響がなく描出できるようになっている(図22)。CT所見での腫瘍長径、境界不鮮明や表面凹凸、偏心性のepicenter、不均一な増強効果、腸管膜や消化管壁への浸潤といった所見を認めた場合には高悪性度の腫瘍を示唆するため、FDG-PETにて腹膜播種病変の有無を確認し、ターゲットとなる病変の集積度合い(SUV、Tumor/Background比)、集積パターンを評価することが重要である。

図1 イマチニブのトラフ値と患者背景との相関
図1 全国7施設のFDG-PETを施行したGISTの解析結果
FDG-PETによる偽陰性が肝臓で2例、偽陽性が食道で1例存在した。
TN: 真陰性、 FN: 偽陰性、 TP: 真陽性、 FP: 偽陽性
Kaneta T et al: Ann Nucl Med 23: 459-464, 2009より許可を得て掲載
図1 イマチニブのトラフ値と患者背景との相関
図2 呼吸制御PET/CTによる肝病変の描出
肝右葉の転移巣は従来法と比較して呼吸制御PET/CTの方が描出能にすぐれる。
したがって、小さな病変や弱い集積を示す病変も検出しやすくなる。

FDG-PETを用いた再発GISTの診断

三宅らは手術が施行されアジュバント療法を受けていない26例の術前FDG-PET所見を検討し、高集積、リング状集積、腫瘍径10cm以上の場合、術後再発の可能性があると報告した(図3)。この結果はイマチニブ治療を受けていない患者さんのPET所見を検討したものであり、分子標的治療の影響を含まない貴重なデータである。実際にはイマチニブ治療により一部に耐性が出現することが知られており、イマチニブに対する持続的反応後、数ヵ月から数年後にも起こりうる事象である3)~5)。腫瘍細胞の新突然変異の獲得に起因する腫瘍内クローンの分化に関連し、FDG-PETで腫瘍部位のさらなるFDG取り込みとして認識される。再発が確認されたとき、イマチニブ以外のチロシンキナーゼ阻害薬への変更を考慮されることになる。

図3 術後再発をきたした患者さんのFDG-PET画像(MIP正面像)

  FDG-PET 病理学的悪性度 手術より再発までの期間
Case 1 Intense-ring shaped High 1,338日
Case 2 Intense-ring shaped High 743日
Case 3 Intense-ring shaped Intermediate 377日
図3 術後再発をきたした患者さんのFDG-PET画像(MIP正面像)
平均観察期間944日で26例中3例に再発を認めた。これらのGISTはいずれも高リスク群で画像上、高集積、リング状集積、腫瘍径10cm以上を示した。
厚生労働省がん研究開発費寺内班会議より許可を得て掲載

FDG-PETを用いた効果判定

周知の事実であるが、GIST治療の主軸に分子標的治療があるため、FDG-PET検査をサロゲートマーカーとして全腫瘍の非侵襲的連続検査に使用することができる。しかしながら、2010年4月の診療報酬改定でも、FDG-PETを用いた治療効果判定は保険診療外の扱いとなっている点に注意を要する。転移性GIST患者さんを対象にした米国の多施設治験では、FDG-PETによる効果判定がより正確でかつイマチニブ単回投与の24時間後という早い時期にレスポンダーを予測できると報告されている。大部分の患者さんでイマチニブに反応があることを踏まえ、さらなる適応検討のツールとして、あるいは他のチロシンキナーゼ阻害薬への反応性の評価を目的としてFDG-PETを使用することができる。

文献

  • 1)Kaneta T et al: Clinical significance of performing 18F-FDG PET on patients with gastrointestinal stromal tumors: a summary of a Japanese multicenter study. Ann Nucl Med 23: 459-464, 2009/li>
  • 2)Daisaki H et al: Multi-bed-position acquisition technique for deep inspiration breath-hold PET/CT: a preliminary result for pulmonary lesions. Ann Nucl Med 24: 179-188, 2010/li>
  • 3)エキスパートによるPET/CTがん病期診断、立石宇貴秀、井上登美夫編、秀潤社、東京、2009/li>
  • 4)GIST診療ガイドライン第2版補訂版、日本癌治療学会、日本胃癌学会、GIST研究会編、金原出版、東京、2010/li>
  • 5)GISTの診断と治療 実践マニュアル、GIST研究会編、エルゼビア・ジャパン、東京、2006