GIST診断・治療アップデート(2011年)

リスク分類

熊本大学大学院生命科学研究部 消化器外科
岩上 志朗 先生、渡邊 雅之 先生、馬場 秀夫 先生

リスク分類の意義

転移を示したGISTは悪性と断定できるが、腫瘍径の小さい、もしくは核分裂像が目立たないGISTでも転移を示すことがある。転移を認めない場合は、良性または悪性と診断するのではなく、腫瘍の再発や転移の危険度を予測して高リスク、中リスク、低リスクと分類する傾向にある。腫瘍径と細胞増殖能などの指標を組み合わせたリスク分類が行われる。

リスク分類の種類と予後予測因子

本邦で最も汎用されているリスク分類は腫瘍径と核分裂像数を組み合わせたFletcher分類(表1)であり、GIST診療ガイドラインにも採用されている1)。2項目のみで評価が可能であり、使用しやすいといった長所があるが、原発部位に関しては考慮されていない。MIB-1 indexや腫瘍壊死像の有無もリスク分類に有用であるとの報告もある(表2)。GISTにおいては以前から、腫瘍発生部位により予後が異なることが示唆されていた。欧米では腫瘍径と核分裂像数に発生部位(胃、十二指腸、小腸、大腸)を考慮にいれた Miettinen分類(表3)が、再発リスクを測定する一般的な基準となってきており2)、本邦において2010年11月に改訂されたGIST診療ガイドラインでは、このMiettinen分類が新たに追加された。予後予測因子としては、臨床的には腫瘍径(≧5cm)、周囲臓器浸潤、血行性転移、腹膜播種、腫瘍破裂、不完全切除などが挙げられる。病理組織学的には核分裂像数(≧5/50HPFまたは≧10/50HPF)と組織学的グレード(分裂腫瘍細胞数、腫瘍細胞の多形性、壊死・出血の有無)などが挙げられる。最近ではc-kitおよびPDGFRA遺伝子の変異も予後予測因子として注目されている。

表1 GISTのリスク分類 (1)
  腫瘍径(cm) 核分裂数 (強拡大50視野当たり)
超低リスク < 2 < 5
低リスク 2~5 < 5
中間リスク < 5
5~10
6~10
< 5
高リスク > 5
> 10
Any Size
> 5
Any Mitotic Rate
> 10

Fletcher CD et al: Hum Pathol 33: 459-465, 2002

表2 GISTのリスク分類 (2)
  腫瘍径 (cm)
≦ 5 5 ~ 10 > 10
MIB-1 index < 10%
かつ腫瘍壊死なし
低リスク 中リスク 高リスク
MIB-1 index ≧ 10%
または腫瘍壊死なし
高リスク 高リスク 高リスク

Hasegawa T et al: Hum Pathol 33: 669-676, 2002

表3 GISTのリスク分類 (3)
Mitotic index Size 小腸 十二指腸 大腸
5以下/50HPFs 2cm以下 None (0%) None (0%) None (0%) None (0%)
5以下/50HPFs 2cm超5cm以下 Very low (1.9%) Low (4.3%) Low (8.3%) Low (8.5%)
5以下/50HPFs 5cm超10cm以下 Low (3.6%) Moderate (24%) Insuff. data Insuff. data
5以下/50HPFs 10cm < Moderate (10%) High (52%) High (34%) High (57%)
> 5/50HPFs 2cm以下 None High None High (54%)
> 5/50HPFs 2cm超5cm以下 Moderate (16%) High (73%) High (50%) High (52%)
> 5/50HPFs 5cm超10cm以下 High (56%) High (85%) Insuff. data Insuff. data
> 5/50HPFs 10cm < High (86%) High (90%) High (86%) High (71%)

Miettinen M et al: Semin Diagn Pathol 23: 70-83, 2006

リスク分類を行う上での注意点・課題

GISTの場合、核分裂像数は400倍視野で核分裂の数を調べ、50視野を合計して(/50HPF)算出する。核分裂像数の評価は標本の固定条件、作成状態や観察者の経験によって異なることがある。また、術前生検などの小さな標本では高倍かつ多数の視野での評価は困難であることから、免疫染色によるMIB-1(Ki67) labeling indexが悪性度判定の指標として用いられるようになってきた。ACOSOG Z9001試験にて完全切除後のGISTに対するイマチニブの術後投与の有用性が示された3)。今後は術後補助化学療法が適応となる患者さんの選択や、術後経過観察の間隔の決定、再発の早期発見のためにも、的確なリスク分類の評価が求められる。

文献

  • 1)Fletcher CD et al: Diagnosis of gastrointestinal stromal tumors: a consensus approach. Hum Pathol 33: 459-465, 2002
  • 2)Miettinen M, Lasota J: Gastrointestinal stromal tumors: pathology and prognosis at different sites. Semin Diagn Pathol 23: 70-83, 2006
  • 3)DeMatteo RP et al: Adjuvant imatinib mesylate after resection of localized, primary gastrointestinal stromal tumor: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 373: 1097-1104, 2009