GIST診断・治療アップデート(2011年)

アジュバント療法

富山大学大学院医学薬学研究部・医学部 内科学第三講座
杉山 敏郎 先生

進行GISTは外科手術単独でもイマチニブ治療単独でも根治は難しく、これらの患者さんに対しては、外科手術とイマチニブ治療を組み合わせた集学的治療が必要とされる。その1つである術後補助療法(アジュバント療法)は、わが国では、2009年7月にイマチニブの使用上の注意が改訂され、術後早期からのアジュバント療法による治療介入が可能となった。また、今回のGIST診療ガイドラインの改訂では、再発リスクの高いGISTに対しアジュバント療法は、推奨度C(行うよう勧めるだけの根拠が明確でない)から推奨度B(行うよう勧められる)に変更された。ここでは、アジュバント療法のエビデンスと実臨床のポイントについて触れる。

アジュバント療法のエビデンス

アジュバント療法の有効性については複数の報告があるが、その代表的な試験として米国・カナダで実施された無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験Z9001試験1)がある。本試験は、腫瘍径3cm以上の初発GIST完全切除を行った患者さん713例を対象に、イマチニブ(400mg/日)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、術後1年間の投与後に2年間の追跡期間を設定し、デザインされた。
その結果、主要評価項目である無再発生存率(RFS)は、イマチニブ群では98%、プラセボ群では83%とイマチニブの1年間のアジュバント療法により有意な再発抑制効果が認められた(ハザード比0.35、p<0.0001、図1)。また、再発リスク因子である腫瘍径に基づいて層別解析を行ったところ、腫瘍径3~6cm、6~10cm、10cm以上のいずれのサブグループにおいてもイマチニブ群でRFSの有意な改善を認め、特に腫瘍径10cmを超える群では1年間で約1/3が再発したプラセボ群に比べて、イマチニブ群では高いRFSを維持し、RFSの改善傾向が顕著であった(ハザード比0.29、p<0.0001、図2)。一方、副次評価項目である全生存率に関しては、中間解析で有効中止となった上に追跡期間が19.7ヵ月と短く、再発例には当然、イマチニブが投与されているので死亡例がイマチニブ群5例、プラセボ群8例と少なく、群間差を認めるに至っていない。

図1 ネオアジュバント療法のフローチャート(GIST診療ガイドライン)
図1 無再発生存率(全症例)
DeMatteo RP et al: Lancet 373: 1097-1104, 2009
図1 ネオアジュバント療法のフローチャート(GIST診療ガイドライン)
図2 無再発生存率(腫瘍径≧10cm)
DeMatteo RP et al: Lancet 373: 1097-1104, 2009

リスク分類を用いた追加解析(Z9001試験)

Z9001試験では、さらにアジュバント療法の対象となる患者さんを明確化するため、腫瘍径と核分裂像数に基づいたリスク分類(表1)による追加解析が行われた。その結果、プラセボ群における2年目の再発率は、低リスクの患者さん10%未満、中リスクの患者さん20%未満であったが、高リスクの患者さんでは50%以上に達した。一方、アジュバント療法群の再発率は、低リスクの患者さん0%、中リスクの患者さん10%未満、高リスクの患者さん20%未満であった。低リスクに分類された患者さんでは再発率も低く適応となりにくいと考えられ、一方で高リスクに分類された患者さんは再発リスクも高く、アジュバント療法群とプラセボ群との再発率の差も顕著であることから、積極的な適応となることが示唆された。このように、アジュバント療法の適応は個々のリスクに応じて決定されるが、その際、リスク分類による再発リスクの評価が治療方針の決定に重要となる。

表1 追加解析で使用したリスク分類(Z9001)
リスク分類 腫瘍径 核分裂像数
低リスク 3~6cm ≦5/50HPF
中リスク 3~6cm 5~10/50HPF
6~10cm ≦5/50HPF
高リスク ≧6cm >5/50HPF
≧10cm
>10/50HPF

リスク分類に基づく適応

現在、汎用されているGISTのリスク分類は、腫瘍径や腫瘍細胞の核分裂像数を指標としたFletcher分類や腫瘍の発生部位を加味したMiettinen分類などがある(参照:リスク分類)。現時点では、どのリスク分類を用い、どのリスク群をアジュバント療法の積極的対象とすべきかのコンセンサスは得られてはいないものの、Fletcher、Miettinen分類のいずれかのリスク分類で高リスクに該当すれば、マイクロメタスタシス(微小転移)を有する可能性が高いことからアジュバント療法を考慮する。また、転移、偽被膜破損、腹膜播種、多臓器浸潤を呈するclinically malignant例は、低・中リスクの場合でもほぼ全例で再発することから、イマチニブを用いたアジュバント療法を行うべきと考えられる。また、中リスクの患者さんは、実際には低リスクに近いものから高リスクに近いものまで多様な病態を含んでいることから、個別にリスクを見極めた上で、主治医と患者さんとの間で話合い、患者さんの意向を尊重し治療方針を決定することが望ましい。
一方、アジュバント療法の投与期間については、Z9001試験ではイマチニブは1年間、投与されたが、高リスクの患者さんではイマチニブ投与中の再発はほとんどみられなかったものの、イマチニブの投与終了後半年以降に再発が増加しており(図2)、高リスクの患者さんに対して1年間の投与は十分な持続効果が得られないことが示唆される。そのため高リスクの患者さんに対する投与期間は、少なくとも1年以上実施すべきと考えられるが、長期投与のエビデンスは今のところ十分には明らかにされていない。現在、高リスクのGIST患者さんを対象にアジュバント療法の長期投与(3年間)の有効性を検討する試験(SSG XⅧ-AIO試験)が進行中であり、その結果が待たれる。

文献

  • 1)DeMatteo RP et al: Adjuvant imatinib mesylate after resection of localised, primary gastrointestinal stromal tumour: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 373: 1097-1104, 2009