GIST診断・治療アップデート(2011年)

再発・進行GISTに対する治療

新潟県厚生農業共同組合連合会 三条総合病院
神田 達夫 先生

再発・進行GISTに対する治療

1)再発GIST治療の基本はイマチニブ治療

GISTの手術を受けた後に、再発した時、診断の段階で肝臓などに既に転移があるとわかった時、あるいは腫瘍が非常に大きくて手術では、きれいに取れないと判断された時、このような場合には、イマチニブ(商品名;グリベック®)という薬による治療が行われる。
イマチニブは、GISTの原因であるKITというタンパク質の働きを抑える薬であり、錠剤の飲み薬である。治療には、このイマチニブを毎日4錠内服する。イマチニブがGISTに効く確率は比較的高く、腫瘍の大きさが半分以下になる確率は約50%といわれている1)。また、腫瘍の大きさはあまり変化しなくとも、腫瘍が変性する(腫瘍細胞が死ぬ)ことも多くあり、それらを合わせると約85%の患者さんに効果があることが知られている。また、海外で行われた臨床試験では、転移や再発を生じてイマチニブで治療した患者さんが存命であった期間の中央値(平均的な値)は約5年と報告されている(図12)
イマチニブには、浮腫(むくみ)、白血球減少、貧血、吐き気、皮疹、手足の筋肉の痛みなどの副作用がある。患者さんのほとんどはイマチニブによる治療により何かしらの副作用を経験するが、その多くは軽いものであり、副作用が原因で治療を続けていけない患者さんは少数である。このようなデータに基づいて、GISTの診療ガイドラインでは、イマチニブを再発・進行GISTの治療の基本としている(図23)

2)手術によるGISTの肝転移治療

GISTが再発した時や、転移がある時にはイマチニブによる治療が基本となるが、腫瘍が肝臓だけにあり、その数も少なく、手術で確実に取り除くことができると見込まれる場合には手術も治療選択肢のひとつとなる。イマチニブがGISTの治療に使われる以前は、手術がGISTの肝転移の治療として一般的であった。ただし、その成績はあまり良いものとはいえなかった。
GISTは比較的珍しい病気のため、肝臓への転移を手術で取り除いた患者さんのデータは多くない。GISTの肝転移を生じた患者さん56名の手術結果を調べた米国の研究4)では、患者さんが存命であった期間の中央値(平均的な値)は約3年であり、手術後5年の時点で存命の方の割合は30%であった。これは、イマチニブによる治療に比べると悪い成績である。そのため、ヨーロッパや米国の診療ガイドラインは、GISTの再発の治療としてイマチニブ治療を勧めている。
一方、上で述べた米国の研究では、手術を受けた人の中でどのような患者さんの治療成績が良かったかという分析も同時に行われている。それによると、最初の手術から肝臓への転移が診断されるまでの期間が2年以上の患者さんに限ってみると、その存命であった期間の中央値(平均的な値)は61ヵ月と報告されており、イマチニブ治療の成績とほぼ同等であった。この成績は、イマチニブを使うことなく得られたものであるため、患者さんによっては、手術も再発治療の有力な武器になり得ることを示している。

図1 切除不能・転移性GIST患者の生存曲線
図1 切除不能・転移性GIST患者さんの生存曲線
欧米で行われたイマチニブ治療の臨床試験の成績。切除不能ないしは転移を伴うGIST患者さん147名を対象にイマチニブ治療が行われた。400mg/日での治療と600mg/日での治療の2つのグループに分け比較されたが、生存期間に大きな違いはみられなかった。生存期間の中央値は57ヵ月であった。
Blanke CD et al: J Clin Oncol 26: 620-625, 2008より許可を得て転載
図2 再発GISTの治療指針
  • a) 完全切除後の再発(イマチニブは未投与)
  • b) 単発または数個までの切除可能肝転移,局所再発のみエビデンスレベル3,推奨度C
図2 再発GISTの治療指針
GIST診療ガイドライン第2版補訂版3)より許可を得て転載

イマチニブ治療の中で行う手術

1)イマチニブ耐性に対する手術

イマチニブ治療を続けてゆく中で、イマチニブが効かない腫瘍が出てくることがある。このような腫瘍はイマチニブ耐性腫瘍と呼ばれ、1個だけのこともあれば、同時にたくさん現れることもある。イマチニブ耐性腫瘍が1~2個であり、比較的容易に、かつ確実に取れると判断される場合には、手術もひとつの治療手段となる(図3)。手術は、もともとあった転移全てを取るのではなく、イマチニブが効かなくなり悪くなった病変だけを取るのが基本である。肝臓の転移が対象になることもあれば、腹膜への転移が対象となることもある。耐性となった腫瘍を切除することで、手術後、再び安定的にイマチニブの治療を続けてゆくことが目標となる。

2)イマチニブ治療に追加して行う手術

イマチニブへの耐性は、腫瘍が全く新しい部位に現れることは少なく、イマチニブによる治療で変性し、小さくなった病変から生じることが多いのが特徴である。そのため、イマチニブの治療効果を高めるため、イマチニブ治療で残った病変を、耐性腫瘍が出現する前に予防的に切除する場合がある。
このような予防的な外科治療が、本当に患者さんの寿命を延ばすのかどうかはわかっておらず、現時点では、まだ、研究段階の治療と見なされている。

図3 イマチニブ耐性GISTの治療指針
  • a) イマチニブ投与開始後180日までの進行を一次耐性といい,181日以降の進行を二次耐性という。
  • b) KITの発現などによりGISTを確認。他の癌や肉腫の場合は各ガイドラインに応じた治療とフォローアップを行う。 c-kitや PDGFR遺伝子変異の確認を行うことが望ましい(genotyping)。
  • c) イマチニブ増量(600mg/日,800mg/日)は 現時点で国内未承認のため,自由診療となる。イマチニブ増量で効果がない場合は,スニチニブもしくはBSCを検討する。
  • d) 他の治療に入れない場合でも,PSや忍容性が許せばイマチニブ400mg/日投与を継続する。
  • e) RFAに関しては,効果のエビデンスは未確認であり,また,保険適用外である。
  • f) スニチニブは2008年6月に薬価収載された。原則50mg/bodyを1日1回4週間投与し,2週間休薬する。用法用量については医薬品医療機器総合機構の添付文書(http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291018M1029_2_01/)を参照すること。
図3 イマチニブ耐性GISTの治療指針
GIST診療ガイドライン第2版補訂版3)より許可を得て転載

文献

  • 1)Demetri GD et al: Efficacy and safety of imatinib mesylate in advanced gastrointestinal stromal tumors. N Engl J Med 347: 472-480, 2002
  • 2)Blanke CD et al: Long-term results from a randamaized phase II trial of standard- versus higher-dose imatinib mesylate for patients with unresectable or metastatic gastrointestinal stromal tumors expressing KIT. J Clin Oncol 26: 620-625, 2008
  • 3)GIST診療ガイドライン第2版補訂版、日本癌治療学会、日本胃癌学会、GIST研究会編、金原出版、東京、2010
  • 4) DeMatteo RP et al: Results of hepatic resection for sarcoma metastatic to liver. Ann Surg 234: 540-548, 2001