GIST診断・治療アップデート(2011年)

イマチニブ耐性GISTに対するスニチニブ治療

大分大学医学部 腫瘍内科学講座
平島 詳典 先生、白尾 国昭 先生

消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)は、消化管に発生する間葉系腫瘍のうち、最も発生頻度の高い腫瘍である。幹細胞因子受容体(KIT)を阻害するイマチニブ(グリベック®)が切除不能のGISTの標準治療となっているが、投与開始後2年以内にほぼ半数の患者さんに耐性が出現することが明らかになってきた1)。本邦のGIST診療ガイドラインによれば、イマチニブ耐性GISTに対する治療として、①スニチニブ(スーテント®)、②イマチニブは継続しながら増悪部位のみ切除、または③イマチニブの増量、とされている。本稿では、イマチニブ耐性GISTにおける耐性の機序と、イマチニブ耐性GISTに対する標準療法であるスニチニブ療法を紹介する。

イマチニブ耐性の機序

イマチニブの耐性機序は大きく2つに分類される。治療開始から効果が認められない一次耐性(初期耐性)と治療にいったん反応したのちに増悪に転じる二次耐性(獲得耐性)である。具体的には一次耐性はイマチニブ投与開始後180日までに増悪するもの、二次耐性は181日以降に増悪するものと定義されるが、その分子メカニズムには違いがあるとされている。すなわち、一次耐性はc-kit遺伝子や血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRA)に変異をもたない野生型、または変異をもっていてもc-kit遺伝子のエクソン9やPDGFRAのD842Vなどに変異を認める腫瘍に多いとされる2)。一方、二次耐性はc-kit遺伝子に点変異が新たに加わることや、c-kit遺伝子の増幅、KITやPDGFRA以外の経路活性化が認められることなどによって生じる。二次的な点変異はc-kit遺伝子のエクソン13、14などATP結合ポケットを形成する領域や、キナーゼ活性化ループであるエクソン17などに認められる3)

スニチニブ治療

スニチニブはマルチターゲット型のチロシンキナーゼ阻害薬であり、さまざまなヒト悪性腫瘍の増殖に関与するKIT、PDGFRA、PDGFRB、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、Fms様チロシンキナーゼ-3受容体(FLT3)、マクロファージコロニー刺激因子受容体(CSF-1R)ならびにret前癌遺伝子(Ret)の受容体型チロシンキナーゼ活性を阻害する分子標的治療薬である4)~8)
Demetriら9)はイマチニブに治療抵抗性もしくは不忍容のGIST患者さんにおけるスニチニブの忍容性と抗腫瘍効果を検討するため、プラセボ投与群との無作為化第Ⅲ相比較試験を行った。スニチニブ投与群ではスニチニブ50mg/日を4週投与2週休薬のスケジュールで投与した。また、プラセボ投与群で増悪がみられた場合にはスニチニブ投与への変更が可能とされた。GIST患者さん312例(スニチニブ投与群207例、プラセボ投与群105例)が登録され、主要評価項目である無増悪期間(time to progression: TTP)はスニチニブ投与群で27.3週(95%信頼区間:16.0-32.1週)、プラセボ投与群で6.4週(95%信頼区間:4.4-10.0週)であり、ハザード比0.33(95%信頼区間:0.23-0.47)、p<0.0001と統計学的に有意な差を認めた。全生存期間もスニチニブ投与群はプラセボ投与群に対し良好な結果を示し、ハザード比0.49(95%信頼区間:0.29-0.83)、p=0.007と有意差を認めた。以上の結果より、スニチニブ投与はイマチニブ抵抗性または不忍容のGIST患者さんに対して有用な治療法であると結論された。
さらに、本邦においてもイマチニブ治療抵抗性もしくは不忍容のGIST患者さんにおけるスニチニブ療法の第Ⅰ/Ⅱ相試験が報告され、主要評価項目であるクリニカルベネフィット率(完全奏効+部分奏効+22週以上継続した病勢安定)が39%(部分奏効率11%、22週以上継続した病勢安定率28%)、TTPの中央値が28週と良好な結果が得られた10)。これらの結果より、スニチニブ療法はイマチニブ抵抗性および不忍容のGIST患者さんに対する標準療法として確立された。
なお、スニチニブの効果はc-kit遺伝子の変異部位に影響を受けることが示唆されている。すなわち、c-kit遺伝子エクソン11変異がありイマチニブに不応となった患者さんのスニチニブによる効果(無増悪生存期間中央値5.1ヵ月)は、エクソン9変異または野生型でイマチニブに不応となった患者さんにおけるスニチニブの効果(無増悪生存期間中央値19.4ヵ月, 19.0ヵ月)よりも低いことが報告されている。また一方で、エクソン11変異をもつ患者さんのイマチニブ不応にはその73%において二次的点変異が関係しており、このうちATP領域(エクソン13、14)において二次変異をもった患者さんの方が、キナーゼ活性化ループであるエクソン17に二次変異をもった患者さんやエクソン18に二次変異をもった患者さんよりスニチニブの効果が得られやすいといった報告もある11)
スニチニブの主な有害事象は、骨髄抑制(白血球減少、好中球減少、血小板減少)、皮膚変色、手足症候群、口内炎、下痢、発熱、肝機能障害、疲労、高血圧であり、適宜休薬、減量をしながら症状に合わせて治療を行う。さらに頻度は低いが留意しておかなくてはならない有害事象として、甲状腺機能障害、QT間隔延長、左室駆出率低下、心不全、膵酵素上昇、ネフローゼ症候群、横紋筋融解症、血栓・塞栓症、出血、可逆性後白質脳症症候群、間質性肺炎などがある。これらは重篤化すれば生命を脅かす可能性があるため、経験豊富な医師のもとでの治療が望まれる。

おわりに

スニチニブの登場は、有効な治療法がなかったイマチニブ耐性GISTに対し大きな光明を与えた。しかしながら、スニチニブはこれまでの殺細胞性抗癌薬とプロフィールの異なる重篤な有害事象を認めることがあるので、適切な減量・休薬、支持療法が必要となる。したがって、本療法は緊急時でも十分な対応ができる医療施設おいて、さらには、がん薬物療法に十分な知識・経験をもつ医師のもとで行うことが望ましい。

文献

  • 1)Blanke CD et al: Long-term results from a randomized phase II trial of standard- versus higher-dose imatinib mesylate for patients with unresectable or metastatic gastrointestinal stromal tumors expressing KIT. J Clin Oncol 26: 620-625, 2008
  • 2)Heinrich MC et al: Kinase mutations and imatinib response in patients with metastatic gastrointestinal stromal tumor. J Clin Oncol 21: 4342-4349, 2003
  • 3)Heinrich MC et al: Molecular correlates of imatinib resistance in gastrointestinal stromal tumors. J Clin Oncol 24: 4764-4774, 2006
  • 4) O’Farrell AM et al: SU11248 is a novel FLT3 tyrosine kinase inhibitor with potent activity in vitro and in vivo. Blood 101: 3597-3605, 2003
  • 5) Mendel DB et al: In vivo antitumor activity of SU11248, a novel tyrosine kinase inhibitor targeting vascular endothelial growth factor and platelet-derived growth factor receptors: determination of a pharmacokinetic/pharmacodynamic relationship. Clin Cancer Res 9: 327-337, 2003
  • 6) Abrams TJ et al: SU11248 inhibits KIT and platelet-derived growth factor receptor beta in preclinical models of human small-cell lung cancer. Mol Cancer Ther 2: 471-478, 2003
  • 7) Murray LJ et al: SU11248 inhibits tumor growth and CSF-1R-dependent osteolysis in an experimental breast cancer bone metastasis model. Clin Exp Metastasis 20: 757-766, 2003
  • 8) Kim DW et al: An orally administered multi-target tyrosine kinase inhibitor, SU11248, is a novel potent inhibitor of thyroid oncogenic RET/papillary thyroid cancer kinases. J Clin Endocrinol Metab 91: 4070-4076, 2006
  • 9) Demetri GD et al: Efficacy and safety of sunitinib in patients with advanced gastrointestinal stromal tumour after failure of imatinib: A randomised controlled trial. Lancet 368: 1329-1338, 2006
  • 10)Shirao K et al: Phase I/II study of sunitinib malate in Japanese patients with gastrointestinal stromal tumor after failure of prior treatment with imatinib mesylate. Invest New Drugs 28: 866-875, 2010
  • 11)Heinrich MC et al: Primary and secondary kinase genotypes correlate with the biological and clinical activity of sunitinib in imatinib-resistant gastrointestinal stromal tumor. J Clin Oncol 26: 5352-5359, 2006