GIST診断・治療アップデート(2011年)

BSC(イマチニブ再投与)

名古屋第二赤十字病院 薬物療法科
澤木 明 先生

切除不能/転移性GISTの薬物療法は、ファーストライン治療がイマチニブ、セカンドライン治療がスニチニブとして確立し、それにより患者さんの予後は大幅に改善した。しかし、本邦でGIST治療に使用できる薬剤はイマチニブとスニチニブのみであり、セカンドラインとしてのスニチニブに対する抵抗性あるいは不耐容により投与継続が困難となった患者さんに対して、サードラインとしてのイマチニブ再投与が1つの選択肢となると考えられている。ここではサードライン治療としてのイマチニブ再投与の有用性について紹介する。

イマチニブ再投与の有用性についての検討(レトロスペクティブ解析)

われわれは、サードライン治療として、BSCに加えてイマチニブ再投与を併用した場合の有用性について、レトロスペクティブな検討を実施した。対象は、国内4つの医療施設で2008年6月~2009年3月までにスニチニブ治療を開始し、イマチニブおよびスニチニブに抵抗性または不耐容となったGIST患者さん39例中、他の試験に組み入れられた13例を除く26例とした。そのうち14例はイマチニブの再投与とBSCの併用が行われ(イマチニブ+BSC)、12例にはBSCのみが行われた。その結果、スニチニブ投与終了時点からの全生存期間(OS)中央値は、イマチニブ+BSC群で22ヵ月、BSC群では4ヵ月と延長する傾向が認められた(p=0.058、図1)。また、腫瘍効果については、CR、PRは認められなかったものの、SDはそれぞれ3例、1例に認められ、安全性は、両群ともにグレード3/4 の有害事象は認められず、忍容性は良好であった(表1)。
以上より、本試験はレトロスペクティブな解析であるものの、イマチニブの再投与がサードライン治療の選択肢の1つとなる可能性が示された。イマチニブ、およびスニチニブに対する耐性は、二次変異を有するクローンにより生じると考えられている。今回の患者さんでも異なる二次変異を有した多様な腫瘍が混在しており(heterogeneity)、一部にイマチニブに感受性を示す病巣がある可能性がある。それが本試験でイマチニブを再投与により進行速度が抑制された1つの要因と推察されている。

図1 イマチニブ再投与有無別にみたOS
図1 イマチニブ再投与有無別にみたOS
Sawaki A et al: ASCO2010, ♯10064
表1 有害事象
  グレード1 グレード2 グレード3
イマチニブ
+BSC群
BSC群 イマチニブ
+BSC群
BSC群 イマチニブ
+BSC群
BSC群
貧血 2 3 0 2 0 0
白血球減少 2 1 4 0 0 0
好中球減少 3 0 0 0 0 0
血小板減少 2 1 1 0 0 0
肝機能障害 1 3 1 1 0 0
発疹 1 0 0 0 0 0
浮腫 12 4 1 0 0 0
悪心 3 2 1 0 0 0
食欲不振 3 2 0 0 0 0
下痢 3 2 0 0 0 0

Sawaki A et al: ASCO2010, ♯10064

欧米ガイドラインの記載

米国のNCCNガイドライン2010年度版2)では、スニチニブ抵抗性を示す患者さんや他に治療法がない患者さんのうち、ファーストライン治療でイマチニブによる効果が得られた患者さんに対しては、サードライン治療でイマチニブを再投与することにより病状の進行を減速できる可能性があることが記載されている。また、欧州のESMOガイドライン2010年度版3)では、腫瘍が進行し他に有効な治療がない場合も、チロシンキナーゼ阻害薬による治療を中止すると進行を早める可能性があり、治療を継続すると進行を減速できる可能性があると記載されている。
以上から、わが国でもセカンドラインとしてのスニチニブに対する抵抗性あるいは不耐容の患者さんに対して、サードラインとしてのイマチニブ再投与は十分考慮に値する治療法と考えられる。

文献

  • 1)Liegl B et al: Heterogeneity of kinase inhibitor resistance mechanisms in GIST. J Pathol 216: 64-74, 2008
  • 2)Demetri GD et al: NCCN Task Force report: update on the management of patients with gastrointestinal stromal tumors. J Natl Compr Canc Netw 8 Suppl 2: S1-S41, 2010
  • 3)Casali PG et al: Gastrointestinal stromal tumours: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 21 suppl 5: v98-v102, 2010