診断・治療のトレンド

GISTの疫学

藤田保健衛生大学臨床腫瘍科 澤木 明 先生

GISTとは

GIST(消化管間質腫瘍;gastrointestinal stromal tumor)とは、食道・胃・小腸・大腸などの消化管の壁にできる腫瘍で「粘膜下腫瘍」を構成する腫瘍の一種です。GISTの腫瘍細胞は、消化管壁の下にある筋肉層の特殊な細胞(カハール介在細胞)と同じ起源から発生したものです。一方、胃癌や大腸癌などのいわゆる“癌”は、粘膜から発生するので、発生の仕方や再発・転移の特性が異なります。

GISTとは

日本でのGISTの発生頻度

GISTの正確な発生頻度は不明ですが、日本における再発あるいは切除不能のGIST症例は1,000~1,500人/年と推計されています。
一方、GISTの多くは、粘膜下腫瘍として切除された後に組織検査によって初めて明らかになります。切除後の経過観察例から、再発を起こさないGIST症例の数はかなり多いことが知られており、GISTの実数は上記の実数をかなり上回ると考えられています。
GISTの臓器別発生頻度では、胃が60~70%と最も多く、次いで小腸20~30%、大腸5%であり、食道はほとんど認められていません。胃内におけるGISTの発生部位にも偏りがあり、弓隆部から体上部に多く認められ、幽門部ではほとんど認められていません。

日本でのGISTの発生頻度

GISTの発育形式

GISTは、発育形式によって、消化管壁内発育型、管内発育型、管外発育型に分けられます。内視鏡像は腫瘍の発育形態により異なりますが、管腔内に突出するタイプでは典型的な粘膜下腫瘍の形態を示し、中心に潰瘍形成を認めることもあります。ただし、発育形式によってGISTの悪性度が変わったり、基本的な治療方針が変わることはありません。

粘膜下腫瘍の発育型

日本と海外のGISTの大きな違い

日本と欧米では、GISTが発見される状況が大きく異なります。日本では、検診が広く普及しているため、腫瘍径が5cm以下の状態で発見されることが多く、そのために症状がほとんどない場合が多くなっています。
これに対して欧米では、検診が日本ほど普及していないことから、症状が発現してはじめて検査・治療が行なわれ、GISTであることがわかります。したがって、多くの場合、発見されたときにはすでに腫瘍径が大きく、10cm以上の割合が多くなります。GISTの症状は、腫瘍の圧迫による消化管の通過障害や、腫瘤が触ってわかる、潰瘍形成による出血などです。
また、一般的に腫瘍径が大きいほど悪性度が高くなることが知られており、欧米のGISTの再発率は日本よりもかなり高いことがわかっています。日本での切除後の再発率は10%程度といわれているのに対し、欧米では半数以上で再発を認めることが報告されています。